Fox village by aki310

For the future of someone, somewhere

SXSWでのハッカソン体験と,現地で学んだ「世界にサービスを広める5つのポイント」

2019年3月にアメリテキサス州オースティンで開かれたSXSW(South by Southwest:サウス・バイ・サウスエスト)に行って来た報告です.

 

SXSWになんで行ったの?

「Sechack365」というプログラムの一環で海外派遣制度があり,これに応募し,ありがたいことに採用して貰ったので行ってきました.

※Sechackについては下リンクをご覧ください.簡単に言うと「セキュリティ×ハッカソン」を全国各地あちこち行きながら,何かしらプロダクトを作ろう!というNICT主催のプログラムです.

sechack365.nict.go.jp

Sechack365内で10月回の時に公募があり,「SXSWに行きたい理由」という題のレポートで選考が行われました.

渡航費,宿泊費,イベント参加費を支援してもらえつつ,現地でハッカソンができるというまたとない機会.他にも現地企業の見学や,凄い方々との集まりに招待してもらえるらしい.(メルカリさんとか,いくつかの県や,Today to Texasなど派遣案件はいくつかあるのですが,多分一番手厚い気がします)

ハッカソンで重荷にならないか心配だなと思いつつも,ここで応募しないと一生後悔するなと思い応募したところ,運よく連れて行ってもらえることになりました.

私がSXSW行きたいと思った理由の原文ママを載せておきます.ざっくりまとめると下の2点です.

  • 学生ラストハッカソンを,アメリカで挑戦し〆たい
  • 世界にサービスを広める方法を知りたい

私が本海外視察でやりたいことは大きく2つあります.「学生ハッカソンの集大成としての挑戦」「来年からの新規事業部で,世界と闘う作品を作るための知見の獲得」です.

・「学生ハッカソンの集大成としての挑戦」

私のものづくりへの挑戦はおそらくSechackに参加している人の中ではかなり遅く大学入学後で,大学1,2年生時にICANという大会に出場したのがきっかけです.初めてのものづくり,チームでの活動,対外への発表など凄く苦労したのですが,表彰式で賞を貰えた時の嬉し涙や素晴らしいメンバーとの楽しい開発の過程を今でも思い出します.こんな経験をもっとしたい,次はもっと凄い作品を作りたい,作品作りを通して素晴らしい人と出会いたい,という気持ちが私を突き動かし,様々な大会やハッカソンに出てきました.

今,私は修士2年で来年からは就職となります.就職後も似たようなことをやる予定ではいるのですが,自分自身への挑戦として,学生最後の機会として,海外のハッカソンで勝ちにいきたいという気持がわいたのが動機の1つです.

「来年からの新規事業部で,世界と闘う作品を作るための知見の獲得」

私は来年から○○社の新規事業部で働く予定です.「スマホの次のデバイス」「医療の民主化」などの社会的課題の解決や,ゲームや声優,映画など様々なコンテンツを利用した趣味ソフトなど色々作ってみたいものがあり,会社という舞台でより自由度をもってハッカソンが出来るのを楽しみにしています.

一方で今の日本メーカーでどこまで世界と戦えるかという不安もあります.現在日本のものづくり業界は以前ほどの力を持っていない印象を学生ながら受けています.日常で使うガジェット機器はほぼ海外製のスマホとPCに統一され,そこで楽しむコンテンツもぱっと思いつくのは海外由来のものが多いのではないでしょうか.次世代ガジェットと言われるVR/ARや生体センシング系もほとんどが海外からのものです.

海外と日本の違いはどこにあるのでしょうか.

個人的な仮説だと,「現代テクノロジーでコンテンツを作る力の差」なのかと思っています.日本人はコンテンツを作ること自体は漫画やアニメ,ゲームなどを見ても凄く得意です.ただ,既存の技術上だとどうしても世界に先駆けた新しい体験を提供することは困難です.日本人のコンテンツ作成力が現在テクノロジーともっと融合した時,日本発のエンターテイメントが世界を揺るがすのかなと思います.

海外ではどのようにしてテクノロジーとコンテンツを融合し,世界を魅了する作品を作っているのか.日本ではどのように融合していけばよいのか.その答えを世界的なコンテンツの祭典であるSXSWで見つけたいです.

 

 後日談ですが,締め切り当日夜19時くらいまでJPHACKSというハッカソンに出ており,帰ってきてから「やっぱ行きてえ!」と思い,3時間くらい悩んで書き,締め切り2分前に提出しました.今見るとやっぱ文章纏まってないですね.

 

SXSWってどんなイベント?

 SXSWとは一言でいうと「エンターテイメントの祭典」で,アメリカ合衆国テキサス州オースティンで毎年3月に開催される音楽祭・映画祭・インタラクティブ祭・ゲーム大会などを組み合わせた大規模イベントです.

元々は1987年に地元オースティンを盛り上げるためテキサス大学の学生が音楽祭を開いたのが始まりで,その後1994年に映画祭,1998年にインタラクティブ祭などが追加され,Tech業界の最新動向の講演や作品大会なども開かれるようになり,10日間で42万人ほどの人が世界中から集まります.

インタラクティブ祭では世界中から夢みるベンチャー企業がサービスを発表展示しており,実はTwitterAirbnbなどもこのSXSWでの受賞をきっかけに世界で広まるサービスとなりました.

 

mashable.com

gigazine.net

 

 

SXSW現地でのスケジュール

おおよその概要図を図に纏めていました.前半部分でテクノロジー系の展示見学,中盤にハッカソンと現地の企業見学,後半にゲーミングと音楽,オースティンの観光に行きました.詳しい内容は後述した日記に纏めてあるので,良かったらご観覧下さい. 

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スケジュール表

気になった展示,イベント,講演から探る潮流

「新しいコミュニケーション手段の掲示

個人的に気になった展示を2点紹介します.僕はSechack365で又吉くんと共同で「セリフ付き画像作成サービス」というのを考案しました.凄くざっくり話すとユーザーがアップロードした画像にセリフを付けたセリフ付き画像でコミュニケーションできる,というサービスです.文字情報だけだとそっけないし感情や意図が伝わりにくい,しかし動画だとわかりやすい代わりに送信&作成コストが大きい.この中間をとる漫画というメディアはインスタのストーリーやラインやスラックのスタンプ機能として沢山使用されています.
で,これをいくつかの企業が近いものを作っていました.例としてソニーで展示されていたGIF作成機.その場でポーズをとって撮影し,文字を書き込んでGIFを作成.作製したGIFはQRコードで読み取り保存できる,といった展示でした.

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ソニーの「その場で撮影したGIFをQRコードで配布&ディスプレイで表示する」展示

もう一つ,三菱電機が出していた「空中喋り書きアプリ」が近かったです.

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http://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2019/0305-a.html

私は現地で体験できなかったのですが,ARマーカーを空中で動かすと,録音した音声の文字が空中に浮かぶというアプリです.インスタのストーリーなどショートムービー等での使用が想定されているらしいです.Sechackで考えたコンセプトとの時代の共鳴が嬉しかった&負けてないな,という感想.

sechack365.nict.go.jp

「技術発展の追求よりも,心と生活の充実に焦点を」

今年の講演を聞いていると,ゲームや音楽,テクノロジーを使ったメンタルヘルスや医療用途としての使用,またテクノロジーによるフェイクニュースの問題,大麻の活用など,技術の未来,というよりも現実の生活の充実や活用に焦点が集まっている印象を受けました. Sechack365で感情状態を変えていこう,というメッセージのプロダクトを作ったのもあり,僕自身共感するところは大きかったです.特に「真実を殺さずにフェイクニュースを根絶することができるのか」「ゼルダの伝説によるメンタルヘルスの効用」の講演の話が印象的でした.前者の方は後から聞いた話ですが,質疑応答で「フェイスブックで誹謗中傷にあったときに,プラットフォーム側は何もしてくれなかった.どうなっているのか」という質問に大きな拍手が送られたそうです.後者の方についても,ゼルダのコスプレをした子が自身の入退院体験をもとに効用について質問し,感動を生んでいました.
他にもいくつかのロボット系の展示で「人を癒す」「気持ちを代弁する」といったコンセプトのものが見受けられました.これは現在の機能でできる製品を作った,というだけかもしれませんが,これを機にロボット市場が作られて欲しいという説明してくれた方の熱意が記憶に残っています.
一方で手塚治虫さんの火の鳥未来編で語られていたような「進歩の無い,どことない閉塞感が漂う社会」がくる不安を少し感じており,未来を見通すためにも自身でプロダクトを作る活動を続けなければ,と感じました.

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「真実を殺さずにフェイクニュースを根絶することができるのか」という講演.画像はmercariSXSWでの「topic 4 : 出会い、学び、共有する。 -現地で感じるSXSWの本質とは- Chihiro Ban @baaan_ch」より使わせて頂きました.

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ゼルダの伝説によるメンタルヘルスの効用」の講演

「2019 SXSW Interactive Innovation Awardsから見る新しい技術」

インタラクティブフェスティバル部門では,2018年6月からの選考を突破した65のプロダクトが13個の部門ごとに3日間展示され,賞が決定されます.以下に賞をとったプロダクトとその概要を纏めてみました.

  • AI & Machine Learning:iN: Cognitive Patient Care Assistant(認知症患者モニタリングシステム)
  • Health, Med, & BioTech:Butterfly iQ(スマホ連携ポータブル超音波診断器)
  • Innovation in Connecting People:Living First Languages Digital Platform(オーストラリアでの識字率向上&先住民の第一言語保護)
  • Music & Audio Innovation:nuraphone – A Self-Learning Headphone(利用者の聴覚を学習して最適な音を提供するヘッドホン)
  • New Economy:Biometric Payments & Age Validation(虹彩と指紋による生体認証)
  • Robotics and Hardware:My Special Aflac Duck™(がん患者向けアヒルロボット)
  • Smart Cities, Transportation & Delivery:Dubai Paperless Strategy(ドバイ政府が行うスマートシティ,ペーパーレス化政策)
  • Social & Culture Impact:Aira – Visual Interpreter for the Blind(カメラで外界の情報を取得し,盲目の人に音声で指示してくれるデバイス&アプリ)
  • Speculative Design:Argus: A Water Monitoring Plant(植物内部にナノセンサーを入れて水の栄養素モニタリング)
  • Style & Wearable Tech:The Eargo Max Hearing Aid(耳の内部に入れられることが可能な超小型充電式補聴器)
  • Visual Media Experience:HBO’s SXSWestworld(ウェストワーストというアメリカのドラマ内の世界を体験できる建物の展示)
  • VR, AR & MR:Fundamental Surgery(触覚フィードバックのある外科医向け手術シミュレータVR
  • Student Innovation:Graphene Brain-Computer Interface(グラフェン単一層による非浸食ヘッドフォン型脳波計測器)

詳しくはこちら:https://www.sxsw.com/awards/interactive-innovation-awards/

 

ご覧の通り,医療系プロダクトが大半を占めています.微細加工・集積化(専門分野的にはMEMSといいます)の恩恵が計算機の小型化からスマホ,ゲーム機,そして医療に向かっているのが現在の半導体業界のトレンドですが,その色が強く出ているな,と感じました.VRやAR,新しいコンピュータインターフェースは研究業界でもやや行き詰まりにあり,しばらくはハード+ソフト(特にAI)を組み合わせた社会の問題解決を行うプロダクトが出てきそうだな,と感じました.個人的に会社入ったらやりたいなと気になっていたポータブル超音波診断器と超小型補聴器は今後が非常に楽しみだなと思う一方で,既に社会実装が始まっているという焦りも少し感じました.

また,正直なところこの賞を取ったものも展示されているものも,「どこかで見たことのあるもの」が大半だったと感じました.メルカリからSXSWに派遣された学生(たしかtopic 2 : SXSWで見えた未来の生活 Haruka Aoki @haruka0109_a)も「7割は知っている,見たことのあるテクノロジー」という言葉を使っていましたが,技術が好きな大学生だったらそこまで新しい内容はなかった気がします.少なくとも理系のある大学だったら似たようなことをやっている研究室は必ずあり,オープンキャンパスや研究室公開の時に見て,知ることができるな,と感じました.アイディアレベルでも,Sechack365で行われていた「生体情報からアートを生成する」「セリフ付き画像を作成する」といった同等のものを思いついてデモを作っていたことから,日本で行われている学生ハッカソンは世界でも通用するもので,SXSWの物とクオリティの差こそあれ,通用すると感じました.

SXSWハッカソン体験とそこから思う賞の取り方

3月12,13日に現地で行われたハッカソンに参加してきました.SXSWハッカソンのルールは以下の通りです.

  • 制限時間は24時間
  • 提供されるAPIの内,どれか一つを必ず使用する(使用したAPIをチーム名と共に提出させられる)
  • 発表時間は2分.発表形式は自由(スライド使っても良いし動画やデモのみでも可).
  • 評価基準は「音楽,AR/VR,AI,ブロックチェーン業界それぞれに与えるインパクトの大きさ」
  • その他いくつかの企業賞がある

一番の曲者はAPIで,提供されるAPIの企業がちゃんと発表されたのが2月26日,APIの使い方を記したメールが送られてきたのが一部3月9日,残り11日というスボラな感じで,これが原因で中々アイディアを決定できませんでした.また,今回提供されたAPIが結構自由度が低く扱いが難しいものが多かったのも難しい要因の一つです.

本当はアイディア選考でチーム決定したかったのですが,APIわかんないということで,一期生&二期生チームに分かれました.僕たちのチームの話し合いで,API先行でプロダクト作るのは少し違うよね,という意思もあり,作りたいもの先行でアイディア出しをしました.若干苦戦しつつも,三橋さんが出した「物をARで認識して振り,音楽を鳴らす」というアイディアが盛り上がり,そこに今はやりの近藤麻理恵さんの「物への感謝の心」「八百万の神」要素を入れればウケそうだな~となって,「Wabisabi ~Let’s listen to the melody of things」というコンセプトで進めることにしました.

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コンセプト図.三橋さんのデッサン力が光っています.

良い感じにコンセプトが決まった後,気づきます.「あれ,API使えるやつが無いな?」

結構悩んでいたのですが,Seioo君が「Crypko~AI Blockchain anime」というGAN(AIの一種)とイーサリアムブロックチェーンの一種)を使った自動画像生成サービスを見つけてくれ,APIイーサリアムを使ったeluvioというAPIを使えば画像生成,すなわち新しい曲の生成ができるよ,という応用例が示せそうだなとなり,API問題が解決しました.ARによる物体認識も,eluvioでの画像生成もそこまで完成はできなさそうだというのはこの時点で認識していました.ただ,去年の方のアドバイスで「サービスは完成しなかったので,コンセプト重視で,完成している部分をつなげて動画を作って発表した」という話を聞いていたので,個々の部分をなるべく作り,できたとこまでは繋げて発表することにしました.分担は以下の通りです.プラットフォームはUnity上で開発しました.

秋田:物体認識

井上:ブロックチェーン

三橋:音楽生成

結果的に発表までにできたのは「Unity上の物体認識と画像保存」「画像からRGBを読み取り.HSVに変換して曲を生成」の機能でした.詳しい技術の話は省きますが,そもそもARで3次元物体認識は技術的に厳しいことや,ブロックチェーンAPIはまずドキュメントが難しいという感じでした.2日目の早い段階で結合は諦め,僕はスライドとコンセプトの洗練をメインにし,自分が発表ポンコツであることが分かっていたのでSeioo君に託しました.

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プロダクト構成図.MiroというホワイドボードAPIを提供している会社を使いSeiooくんが作ってくれました.

結果としてはElvoioの企業賞2位を獲得できました.

 

賞を獲得できた要因として

  • そもそもElvo.ioを使っているチームが少なく,その上でスポンサー賞があった
  • クオリティの高い動画が用意でき,コンセプトがしっかり評価され,受賞を選びやすい動機が作ってくれた三橋さん神👏
  • 質疑応答でioを使う理由をしっかり説明できたSeioo神👏
  • Seioo君が何度も質問しにいった+メールでも連絡していたことから印象に残った

といった理由が考えられます.すなわち,スポンサー賞であればコンセプトを事前にしっかり磨いておき,当日印象に残るように接触しておけば,比較的取りやすいと感じました.一方で入賞するためにはAPIを使った明確な動機付けと,しっかりしたデモが必要だと感じました.また,入賞チームは会場や審査員を巻き込み,盛り上げるプレゼンをしていたのも特徴です.

纏めると来年の方(+運営)に向けたアドバイスは以下の3点となります.

  • 募集要項に「音楽,VR/AR,AI,ブロックチェーン関連で何か面白いアイディアを記述して下さい」という項目を作るとアイディア出しがスムーズにいきそうだと思いました.何より準備できるメリットが大きい.いくつか用意しておいて,マッチするAPIを選びましょう.
  • APIの使用した良いアイディアが思いつかない場合は,自分の作りたいものを作り,後付けで企業賞が貰えるAPIを付加しましょう.完成しなくても良いですが,コンセプトをしっかり説明しましょう.
  • 審査員を巻き込んだプレゼンをできると良いです.そのためにも事前に英会話の練習をある程度しておけると活きると思います.

ハッカソン自体の印象は以下の通りです.

  • 正直技術レベルも発表レベルもそこまで日本と変わらないな,と感じた.
  • 日本の時と同様に順当に勝つべきところが勝っていったと思う.技術力もそうだし,プレゼン,演出,会場の盛り上げが重要なのは変わらない.
  • 去年は1位と3位のプロダクトチームが起業したらしいが,今年のプロダクトを見ると失礼かもしれないが「このレベルで起業しても良いんだな」と感じた.これは審査員がアメリカ版マネーの虎的な起業促進番組に出ている方や世界的大企業のオーナーなどが集まっており,金銭的意思決定ができる人が集まっているのが大きいなと感じた.日本だと精々企業のエンジニアがAPIの質問受付として来るくらいのことが多く,事業の意思決定ができるレベルの方がもっと来てくれるように勧誘していきたいと思った.
  • 発表の流れは「プロダクトの説明→デモ動画(なるべく早い段階で)→理念など」という感じが多かった.理念や前置きはなるべく減らしていきましょう.
  • 発表や審査で飛び交う英語が思った以上に聞き取れない.

正直今回の賞は完全におまけ的な感じというのが実情ですが,とりあえず素晴らしいメンバーと楽しく活動できて良かったです.また,海外の,しかもSXSWのハッカソンということでどんな素晴らしいプロダクトが出てくるのかと身構えていたのですが,意外と普段のハッカソンと変わらず,僕たち日本の学生も「やれる」ということに気づけたのが一番の収穫です.ハッカソンで終わらず,起業してリリースするところの差を埋めていけるように今回の知見を周りに伝えつつ,自身もまだまだプレイヤーとして活動していこうと思います.

ハッカソンに出てる作品は以下のリンクから見れます.

sxswhackathon2019.devpost.com

 

世界にサービスを広める5つのポイント

僕のSXSW参加のメインテーマです.日本出発前は「現代テクノロジーでコンテンツを作る力の差」が答えだと思っていたので,ハッカソンでどんな凄い発想,凄い技術が出てくるのか楽しみにしていたのですが,意外と日本の時と変わらない感じで,むしろ日本の方がSXSWの展示を見ていると盛り上がっている気がしました(実際,今年日本勢はソニーNHKをはじめ,賞の大半をとっています)

www.sxsw.com

じゃあ何が違うのかというと,やはり一点はハッカソンの項でも書いたのですが,

  • 事業の意思決定ができる人がハッカソンに集まり,その場で資金提供や起業の支援をしていること

かなと思いました.ここに関しては,会社に入ってからもプレイヤーかつ運営者として活動していくことで少しずつ変えていけたらと思っています.

もう一点ツイッターAirbnb,現地での企業見学(Bumbleなど)を通して,広まったサービスの共通点を発見して気づいたことがあります.それは

  • 「作ったプロダクトを精力的に宣伝し,ユーザーに使ってもらうことでリアルタイムにSXSW中の問題解決をしたり,便利にしたこと」

でした.

Twitterを例にとると,ツイッターは展示に当時異例となる特大ディスプレイをいくつかの通路に用意し,リアルタイムで呟かれたツイートを表示して,「あっ,自分のツイートが表示されている!」という喜びを提供したらしいです.また,「この講演は面白いぞ」「個々のバーは静かなのでおすすめ」「ここに集まって意見交換しようぜ」みたいなツイートでリアルタイムに人々の生活を便利にしていったらしいです.

Airbnbはホテルが満席,かつ空いているところも非常に値段が高い,といった問題を解決していきました.

Bumble(Tinderの初期メンバーが開発した,女性からメッセージを送るマッチングサービス.企業見学にいきました)では,SXSW会場の近くに非常に特徴的で目出つ黄色い企業オフィスを立てました.また,SXSW期間中はTシャツを来て歩き回って宣伝し,沢山のグッツを配ったらしいです.人と人の交流を促進するマッチングサービスなので,SXSWで出会う新しい人との交流を促進したかと思います.

すなはち,

  • 「テクノロジーに敏感な,大人数のアーリーアダプタが集まる場所で,リアルタイムに自分たちのプロダクトを使ってもらい生活をより豊かに,便利にすることで世界に広まっていく」

ということが世界に広まるサービスの生み出し方だと感じました.ただプロダクトを作るだけでなく,プロダクトを展示するだけでなく,それ宣伝して使ってもらい,楽しんでもらい,生活を豊かにして,皆にも使ってもらいたい,と思わせて初めて世界で広まっていくのだなと感じました.日本メーカーもここ数年SXSWでの展示になれ,ユーザーに楽しんでもらえるような工夫と宣伝ができるようになり,賞も獲得できるようになりました.あとはこの活動をいかに続けていけるか,そして社会実装が出来るかがポイントだなと感じました.

また,SXSWが果たす「未完成のスタートアップの展示会」という役割も非常に大きいと感じました.SXSWではサービスだけでなく,ゲーム,映画,音楽など様々なアマチュアよりのクリエイターが自身のプロダクトを展示しています.こういったプロではないアマチュアが作品を展示し,育成しようとする機会が果たす役割も凄く大きいと感じました.

  • マチュアがプロダクトを展示し,互いに育成&評価し合うコミュニティ

実はこれ,日本はSXSW並か,それ以上に成功しているのではないかと思っているコミュニティがあります.毎年二回,夏冬に開催される「コミックマーケット」通称コミケです.実はコミケってSXSWよりも多い動員人数です(SXSWが42万人,コミケが55万人).有料,無料の違いはありますが,それでもそこから生まれた様々な作家,作品(高橋留美子あだち充Fateひぐらし,東方などなど)は図り知れません.日本でもこういうコミュニティって作れるんです.

コミケも始まりは700人くらいの少人数の参加で,自作漫画の販売だけだったのが,映像作品,ゲーム,コスプレ,グッツなど,人々の情熱を元に発展と進化を繰り返し,現在の形になりました.SXSWも元は小さな音楽祭だったのが,今では世界に羽ばたくサービスが生まれるイベントとなっています.「テクノロジーに敏感な,大人数のアーリーアダプタが集まるコミュニティ」,これを作るためにも「アマチュアがプロダクトを展示し,互いに育成&評価し合うコミュニティ」を作っていく活動が必要だなと感じました.

  • サービス作りの根幹はコミュニティづくりにあり

これが現状の僕の答えです.

Sechack365では上記の条件を満たす素晴らしいコミュニティづくりが出来ているなと感じています.Sechackの参加人数が増えていった将来が楽しみで仕方ないと思いつつ,日本に元気が無くなりかけている今の時点で発足してくれて良かったなと思います.

僕自身,今年一年東北大学で「全脳アーキテクチャ若手の会東北支部」という団体の立ち上げにかかわり,内部でハッカソンやLT大会と開催し,少しずつ集まったメンバーが有機的反応をして成長し,自分も想定しなかったような発展をしているのを観測してきました.今後も会社内外で草の根レベルで活動し,日本と世界をより良いものにしていけたらな,と思います.

次年度への敬具

  • 事前にカンファレンスを調べましょう.僕はTwitterでメルカリの人が呟いてああ行くべきだったあああという案件が非常に多かったです.
  • 講演は対話型のものを聞き取るのは結構きついです.おすすめはSoloのセッションで,これだとプレゼン資料が用意されているのでまだマシ.
  • なるべく日本で開かれるMeetupに参加すると,オードリーさんと繋がれ,色んな情報を頂けます.またToday to Texasの方々とも知り合えるかも.僕の場合知り合いが一人いてサーフボードの展示をしてました
  • 事前にオンライン英会話をしておくと良いです.Seiooの話すノリが上手くて理由を聞いたところ,3週間カナダでホームステイ+半年間オンライン英会話をしていたらしいです.
  • ハッカソンのテーマはあまり変わらないので,音楽・VR/AR,AI,ブロックチェーン関連でのアイディアを募集要項で述べるようにするとアイディアだしがスムーズにいく気がしました(APIは最悪後付けでもよいので)
  • 詐欺事件が頻発していたそうです.日本人を狙って声をかけ,写真に触ったら数ドル請求していたらしいです.基本路上の声掛けにはガンしかしましょう.
  • 食に関して,僕はルーティンを決めているレベルで日本食にどっぷり使っている人間なので,少し苦労しました.ラーメンは買える&お店があるので,ご飯ものやうどんを持っていきましょう.魚の缶詰が欲しかった.また,会場近くに中華料理のお店があり,そこのチャーハンでご飯を摂取しましょう.
  • レストランではシェアを考えましょう.一個当たりが値段・量が多めなのがアメリカ食事の特徴です.日本でいう2人前がアメリカでいう1人前で売っている感じです.値段も基本的には量相応.
  • どんどん人に話しかけましょう.SXSWって実はそこまで技術の展示を見るためだけのためにわざわざ行くものではないな,という気もしました.じゃあ何のために行くかというと,最新技術とエンターテイメントを愛する人との交流,自分からだとキャッチできない分野(特に音楽)のインプットかなと思いました.エンターテイメントって凄く国民性がでる分野なので,世界中から集まる人々が何に熱狂し,何に夢中になっているのか,ネット上で文書を読むだけではわからない熱意と情熱みたいなものを現地で感じ,感性を育てることができたことによって,今後のものづくりで役立ってきそうだなと感じています.Uberで熱くアフリカンミュージックを語ってくれたお兄さん,ライブで耳栓をくれたライブオタクのお兄さん(後日ツイッターでバズっていた),某アプリでマッチして色々話したテキサス大学のお姉さん,などなど.

 この方に耳栓貰いました.

日記             

3月9日

初日は移動と参加登録で終わりました.

3月8日の秋葉原での成果発表会の後,東横INN羽田空港第二ホテルに宿泊しました.翌朝8時に空港集合のため,早めに就寝して6時30頃起床.ホテルから空港行きの無料送迎バスが出ており,7時15分の国際線ターミナル行きの便に皆で乗りました.(後日談ですが,乗ろうと思っていたバスが国内線にしか止まらないことに朝気づき,慌てて準備したため朝食を食べ損ないました)

空港到着後,航空券の発券と現地通貨の交換をしました.発券時に現地での滞在先住所を聞かれ探す手間が生じたので,メモっておくと良かったです.現金は5000円をドルに変換しました(42ドルくらい).ただ結局現金を使ったのはホテルのベットメイキング2回お願いした時のチップ料金4ドルくらいしか使わなかったので,10ドル分くらいあれば十分でした.その後保安検査を済ませ,飛行機に乗りました.まずは羽田空港からシカゴ空港へ10時間くらいのフライト.機内ではテトリスのスコア更新,「パッドマン 5億人の女性を救った男」,東京03というお気に入り芸人のコント視聴,購入しておいたUnity本の勉強をしました.ハッカソンのテーマの一つであるVR/AR系を触る場合Unityほぼ必須なので少し作れるようにしました.

シカゴ空港到着後,入国審査をしてオースティンに向かう便のターミナルに移動しました.アナウンスによると外は-2℃と言っていたけど,空港内はコートを羽織るとちょうどいいくらいで割と温かったです.入国審査はかなりの行列で1時間くらいかかりました.スーツケースを受け取り,再度搬入後,バスでターミナルを移動.去年ダラス空港でも体験していたけどアメリカの大都市空港は規模がでかい.ターミナル到着後,次の便まで5時間くらいあったので,自由行動になりました.

自由時間でSIMのアクティベートとハッカソンの準備を行いました.浅尾さんの持参ポケットWIFIで頂いたSIMのアクティベートを行ったのですが,アクティベート後24時間経過しないと有効にならないことがここで判明.使うSIMによりますが,日本で事前準備しておくと良かったです.自己紹介後,皆スキルセットが似ておりどこで分けてもそんなに変わらないこと,なるべく知っている間柄がやりやすそう,ということで一期生VS二期生ということになりました.(やや反省点ですが,もっと早い段階でチーム決めちゃった方が良かったなと今では思っています.SXSWのハッカソンは当日でもチーム登録OKだったので,出発日までは皆でアイディアをブレストしていたのですが,結局発言していたのが2人くらいになっていました.大人数のオンラインチャットでのアイディアは渋らないので,少なくとも少人数にしないと上手くいかないな,と感じました).飛行機乗っている間にAPIの説明メールが来ていたことが判明し,皆で「よくわかんないな~??」と言いつつ調査を始めました.

 離陸時間30分前くらいに飛行機のターミナル変更に佐藤さんが気づき,ダッシュで移動し,何とか乗れました.稀に良く変更があるみたいなので,注意して見ておくと良かったです.機内は爆睡していたので記憶が曖昧ですが,3時間くらいでオースティンに到着しました.オースティンは17~22度と温かく,周りは大体半そで.半そでに何か一枚羽織るくらいで丁度良いと感じました.空港からSuperシャトルでホテルに向かい,チェックインをしました.

テルチェックインして部屋に荷物を置いた後,SXSWの参加登録のため,町の観光がてら建物へ徒歩で向かいました.向かう途中で市街議事堂があったので軽く回りを見学.日本でいう皇居みたいな感じになっており,市民が集まる公園みたいになっていました.アメリカの公園によく見ることで話題のリスも何匹か見られました.印象的だったのは電気スクーターが街のあちこちで見られ,普及していたことでした.日本のレンタルバイクみたいな感じで街中あちこちに置いてあり,アプリで読み取って好きな場所で降りて良く,1分15セントくらいで利用できました.Bird,Lime,LyftUberといった会社が参入しており,街中でも人気があったのですが,結構危ないことから町で問題になっているみたいです.自転車くらいの速度が出る乗り物を盛り上がっている街中で乗ったらそりゃ危ない.自転車くらいの速度が出る乗り物を,盛り上がっている街中で乗りまわしたら危ないのは当たり前で,警察が注意しているのを何回か見ました.

 会場に入って早速登録後,首から下げるチケットと共にかばんや資料を貰いました.この日は展示が終了していたので,お肉屋さんへ.美味しいお肉を食べながら去年のハッカソンの話を聞きました.予めブログを見てはいたけれど,詳しいプレゼンの内容が気になりDMを送って「絶賛されたアイディアをどのように決めたのか」「プロダクトが完成しなかったという話を聞いたが,どのようにプレゼンをしたのか」について質問してみました.

ご飯後はUberでホテルに戻り,即就寝.

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電子スクーター.街中にあちこち置いてあり,アプリで読み取った後,自由に乗り降りできる.夕方になると電池が無いものが多かったです.

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SXSWの簡易マップ(SXSWを日本に伝達する活動をしているAudrey Kimuraさん作) メインの展示はACCで開かれ,ここで参加登録をしました.その他Hiltonというビルで講演が開かれており,企業が独自でブースを開いていました.

310

6時ごろ起床. SIMアクティベートメールが来ているのを確認したが,繋がらないのを確認.他の人(iphone)は繋がっていたので,自分の端末HUAWEI Mate 20 liteに問題があるみたいでした.中華端末を使う方は良く調べ対応するSIMを購入するか,ポケットWIFIを使った方が良さそうです.今回は浅尾さんから別のH2OというSIMを頂きました

9時にフロントに集まり,Hiltonという建物に向いました.本来はここで日本貿易振興会からSXSWの説明や,テキサス州への投資開発の現状,プレゼンの仕方などを学ぶ予定だったのですが,予定が一日ずれていたみたいで,オリエンテーション後自由行動になりました.

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本来行われるはずだった日本貿易振興会によるミートアップ内容.資料だけ読んだところ「アメリカ人に対する効果的なプレゼンテーション」「日本とテキサス州のビジネス交流の現状とチャンス」など面白そうな内容でした.

初めにAIをテーマにしたスタートアップのピッチセッションを聴講.2分以内で自社のプロダクト内容をプレゼンし,質疑応答を5分ほど受け,時間オーバーすると音が流れる仕組みの発表が5件行われました.発表を見ながらどういうプレゼンがアメリカで求められるかを少しイメージしました.

・DERQPREVEBT:自動車事故と無くすためのAIアルゴリズムの開発

・HENDRIX.AI: 会議のメモなどを自動で書き起こす

・RoadBotics:政府や企業に向けた道路の管理活用支援

・Sherpa:個人に合わせた保険適用

・VENCE:スマートフォンから農場のマネジメントを行う

 

その後Trade Showという沢山のスタートアップがプロトタイプ製品を展示しているブースに行きました. 日本からも選考に通ったベンチャー企業がJ-Startupとして展示して盛り上がっていました.(音声感情認識Empathや人口流れ星ALE,クモの糸の生産Spiberなど)

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会場の真ん中に日本国旗&日本ブースがありました.

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LOVOT(らぼっと)という家庭用ロボット.「役には立たない,でも愛着がある」というコンセプトで赤ちゃんくらいの重さでとても良い肌触りでした.このロボットでまずはロボット市場を作りたいという話でした. (個人的な印象ですが,現在の技術をお金にするためにストーリーを作っている感じがして,本当はゴリゴリ技術を突き詰めたそうな感じを受けました.技術をお金にするのって難しい.)

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個人的に好きだった漫画自動翻訳機Mantra.Today to Texasのチームが開発.漫画のセリフは結構独特な言い回しや特殊なフォントといった要素から困難だったのですが,そこに挑戦したプロダクトです.現地でラブひなやナルトなどのページを英語化してプレゼントしていたのも良いなあと感じました.

 

その後ソニーブースに行きました.メイン会場のすぐそばという好立地に,企業の中でも一番大きいと思われる広さのブースを作っていました.流石3年目でノウハウを持っているだけあり,内部のブース展示も見事でした(後に賞を取ったらしい).長蛇の列からあまり体験できなかったのですが,

・CAVE without a LIGHT(暗闇で音響・触覚技術を楽しむアトラクション)

・GIFをその場で作成する展示

・触感フィードバックされるダーツ

・Flow Machines(フローマシーンズというAIアシスト作況技術)

・石黒さんなどロボット工学研究者による講演「Will technology enrich human creativity?(テクノロジーはクリエイティビティを豊かにするのか?)」

などが発表されており,周りの話を聞くとSXSWで一番面白かったという評価が多かったです.

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圧倒的広さ&好立地を誇ったソニーブース.「Will technology enrich human creativity?」「Are you the next hendrix?」

その後,Japan isilandに行きました.所謂外国の方がイメージする日本というコンセプトで落合陽一さんと経済産業省のもと空間設計がされていました.畳の部屋やパチンコ,ダンスレボリューション,パックマン,カラオケなどの展示がされていました.また,神戸牛,魚の天ぷら,ヨーグルト牛乳といった日本食(?)も提供されていました.何となくそこにいて安心感が強く,自分は日本人だな~と感じました.

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SXSWの外れの方に立地していたのもあり,かなり町の風景と浮いていた外装

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カオスな内装.日本人としては居心地よかったけど.

その後17:30に集合してホテルに戻り,アイディア出しを始めました. 「セリフ付き画像作成サービス」「皆で動画や画像のタイトルを決め合うサービス」「セリフ発声評価サイト」などを提案し,最終的に三橋さんの提案した「周りのものをARで音を生み出すアプリ」に暫定決定.八百万の神近藤麻理恵さんの話をプレゼンにいれ,あらゆるものに価値を与えることをメインテーマにしてコンセプト受けを狙いつつ,投稿した音をMAD動画みたく繋げて楽しい曲が作成できたら楽しいプレゼンになりそうだな,と話し合いました.

その後ARW(ANOTHER REAL WORLD)というツアーで来ている方々とご飯に行きました.NHKの谷さんとメインで話し,アドバイス経験談をお聞きしました.ホテルに戻り少し再度コンセプトを考え直し,技術調査した後就寝.

3月11日

まずはNHKホールにいき8Kシアターを鑑賞.ソニー独自開発のCrystal LEDディスプレイシステム(横約9.7m×縦約5.4m・約440インチ)を使った8K ディスプレイによるダンス,花火,ライブ,グランツーリスモなどの映像を視聴しました.迫力&ライブ感は確かに凄かったのですが,これが画面の奇麗さからくるものなのか,画面の大きさから来るものなのかが今一判別つかなかったという感想に.五感を刺激するメディアが増えてきている中,単に映像の良さを実現するだけでは感動を与える体験には至らないという結果から,ここでも単に技術を昇華させる難しさを感じました.

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NHK8Kの展示上.日本人が集まっていました.

街中をぶらついた後,お昼にはフードコートで塩ラーメンを食べました.塩ラーメン10ドル.やや甘めの安心な味で元気が出ました.SXSW会場そばにはもう一軒「だるまラーメン」というラーメン屋もあり,比較的日本食にたどり着きやすかったです.以前アメリカに行った時も感じたのですが,自分は人生における食のプライオリティが高すぎて日本を長期で出れないと確信しました.日本の産業を盛り上げなければ.

その後Tradeshowを再度ぶらぶらした後,ハッカソンのMeetupに参加しました.Tradeshowの中にMeetupの敷地があり,その中で交流するというシステムでした.ただ,参加者が私たち以外だと3人くらいしかおらず,特に運営側からも重要連絡はありませんでした.メキシコで音楽系のスタートアップを経営している方と,ニューヨークから二年連続で参加する方,運営者,ブロックチェーン系のスポンサーと話しました.ここでSeioo君の英語力がメンバーで一番高いことに気づきました(ノリノリで「Hey guys」って話しかけていて凄かった.話を聞くとカナダに短期留学+オンライン英会話とやっていたらしい.)

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ハッカソンMeetup.

その後はホテルに戻り,作戦会議兼調査を始めました.途中で浅尾さんが買ってきてくれたタコスがとても美味しかったです.特にソフトが好みで,今の所アメリカで一番しっくりきたご飯でした.イチゴとブルーベリーもおいしかった.

何となく技術的に出来そうな範囲,使用できそうなAPI,プレゼンのストーリーが見えてきた.三橋さん,この日の内に基幹機能(画像→音声)を作り終わりかけていて凄い.

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10:30ごろに会場に向けて出発し,レジストレーションを行いました.予めWeb上で署名&提出していたけど,何故かもう一度行ったのでWeb上でやらなくても良かったかもしれない.参加も結構土壇場参加が可能みたい.

登録後,会場のテーブルを1つSechackメンバーで占拠しました. 会場は壁際にスポンサーテーブルが並べられており,中に円形のテーブル&椅子が敷き詰められている感じでした.僕がテーブルの番をしている間に残りメンバーがスポンサーに話しかけに行き,Tシャツなどを貰っていました.いいなあ.

しばらくすると別室でバイキング形式の食事案内がきました.食事の列に並ぶ中で日本人グループがいたので声をかけてみたら,大日本印刷株式会社の方々でした.自分の所属研究室にも社会人ドクターの方がきているので親近感がわきました.会社の派遣というよりは自主的に参加することになったらしい.一緒に軽くご飯を食べました.

その後レジストレーションの部屋に行き,スポンサーAPIの説明の後,ハッカソンのルールの説明を受けました.また,同時にメンバーを募集しているチームが壇上に上がり,自己紹介や作りたいもののアピールなどを行いました.私はこのあたりで寝落ちしました.

一通り説明が終わった後,2時間遅れくらいで説明会終了&ハッカソン開始.基幹部分は三橋さんが作ってくれており,問題となるAPIにどれを使うか,どこまで開発するか,どのようなプレゼンをするかなどを話し合いました.私は画像認識+出来たら認識した物体のみを動かす機能作れたら良いねという感じでもくもく進め始めました.

一旦ホテルに戻った後,暖炉に集まり作業開始. 夜の1時30分くらいに解散.正直眠気と闘って起きていただけであまり進まなかった.初日から時差ボケが治らず3~4時間の睡眠をあいまいに挟むという生活になっていたのもコンディションが良くなかった要因.罪悪感から起きていたけど眠くなったらちゃんと寝て,頭をすっきりしてパフォーマンス出した方が良かったな,と反省.

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ハッカソン会場の様子.真ん中のライオンみたいな髪の方がオーガナイザーの方.

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3時間くらい寝て起床.技術的に詳しい友人の助けもあり少し進んだけど,機能の完結と統合は現実的じゃなさそうなので,残り時間はプレゼンのコンセプト言語化などに重きを置くことにしました.

朝8時に会場に入ったが,帰ってない人,寝袋で寝ている人などが見られ席が結構埋まっていました.また,スポンサーは9時から来場予定らしく,朝がっつり早く来る必要はなかったかも.11時くらいまではもくもくして,その後はお二人にもプレゼンの作成に絞って貰いました.三橋さんの動画,デザインセンスがやはり強い.おおよそのプレゼンスライド,シナリオを作って,篠原さんに見てもらい,一番英語上手いであろうSeioo君に託しました.

12時くらいから事前練習と動作確認の時間になり,各チームが練習していきました.ここで発表順番が26番ということを知りました.事前練習でPC操作と動画の再生と音量調整が課題とわかり再度修正し,いよいよ本番.

各チームのプロダクトを見ると,結構似たような,どこかで見たことのあるプロダクトが多かったです.今回提供されるAPIが結構限定的な使い方のものが多く,仕方ないのかもしれない.大日本印刷チームはほぼネイティブの方がいて,審査員さんと実際にアプリを使って曲の交換をしていて上手くプレゼンしていました.また,VRを使ったプロダクトを発表したチームは審査員さんに体験させて,称賛のコメントを引き出すといった工夫をしていました.スライドを使わないチームも多かったですが,流石海外という形でどこも上手く発表していました.Sechackブルーチームも「絆」をテーマにした路上ライブの促進をテーマにしたプロダクトでしっかりカラーを出していました.

我々茶色チーム発表.Seiooくん,台詞を入れたスマホを机に忘れてくるハプニングをしつつも,上手く話していました.質問は2つ.

・バナナを識別するとどのような曲が流れるのか(画像→音声化の仕組み)

ブロックチェーンを使う理由は

どちらも想定していた質問で,補助スライドを用意していたのですが,発表後オーナーの方が素早くPC交換してしまいだせませんでした.しかし Seioo君が上手く答えてくれて助かりました.

その後全チームの発表が終わり,審査の時間.なぜか参加チームの1つのドキュメンタリー映像の視聴と,ヒューマンビートボックスを披露するパフォーマンの時間になりました.

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ヒューマンビートボックスを披露しだす参加者の一人.ちなみに関係あるのかどうかわからないですが,この方のチームが優勝しました.

 

私たちのチームは結果的にElvo.ioというブロックチェーン系企業の2番目の企業賞を頂きました.いつでも遊びに来てね,後で景品を郵送するというコメント頂きました.三橋さんの動画&デザイン,Seiooくんのプレゼン&英語力で賞を取れてお二方には頭が上がらないなあという感じでした.

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この日はARMの方々と合同で現地の企業見学に行きました.

・Capital factory:Austinオリジナルのインキュベーション.スタートアップ,大企業,防衛ブースの階をそれぞれ見学

・Eggchain:去年起業したばかりのブロックチェーンを利用した卵子バンク

・Aethetic Integration:機械学習による自動推論エンジン

・Bumble:Tinder創設者の一人が起業したマッチングアプリ.女性からメッセージを送ることが特徴

 

Capital factoryではスタートアップが集まるフロア,大企業が集まるフロア,防衛企業が集まるフロアを見学しました.どのエリアもとても開放的で「ここに居たい,来たい!」と思われるような作りになっており,スターウォーズキャプテンアメリカなどの装飾がオーナーの趣味で飾ってありました.また,最新のVR機器体験部屋や,3D プリンタ,自由に使えるディスプレイなど開発環境としても優れていました.企業が集まる場所づくり自体は世界中あちこちで見られる試みですが,この企業の特徴としてはボランティアで登録しているメンター陣と企業のマッチングを職員の方が人力で行っているところ.ベイエリアよりも魅力的な土地,空間,食,人といった要素を町と会社が協力して作り上げているみたいでした.

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スタートアップが集まるフロア.プロテインや軽食が無料で頂けました.

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Bumbleの真っ黄色なオフィス.SXSWで目立つようにデザイナーの元,狙って作ったらしいです.

SXSWをきっかけに広まったサービスはtwitterAirbnbなどがあり,Bumbleも同様に2016年に出店し急成長しています.サービスを広めるために,写真のような特徴的な建物を作っただけでなく,Tシャツを着て目立たせたり,その他沢山のグッズを作って広め,実際に現地で使ってもらっていったらしいです.ただ展示するだけではなく,広まるサービスというのはこういった地道な努力と宣伝が必要なのだな,と学びました.

企業見学後はARMの方々と意見交換会をしました.様々な会社から重役の方々がきており,大麻ビジネスの今後,電子スクーターの機能,展示と内装のコツ,アイドル&音楽ビジネス,ブランディングの仕方,価値あるコミュニティの作り方など非常に濃い内容を聞けて勉強になりました.実はSXSWでこの時の1時間が一番印象に残った気がします.

ここ数年日本勢のプロダクトはSXSWでも注目を浴びており,作るもの自体は負けていないと思います.これはSXSWに関わる人達のコミュニティの力が非常に大きいなと感じています.あとはいかに今のコミュニティを維持して活動を続けていくか,そして作ったプロダクトをいかに広告活動して広めるかがポイントな気がしました.特にSXSWで広まったサービスは人が集まることで生じる課題をリアルタイムで解決したり,便利にしたのが特徴だと思います.日本からコミケのような人が集まる場所で社会実装をして,その成果をSXSWに持っていけたら,インパクトを齎せるのではないかなと思いました.

その後祝勝会を行いました.バーベキューの肉が美味しかったです.             

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この日は若干体調不良気味だったので昼から行動しました.ウォールマートに行き,お土産用にいくつかお菓子を購入しました.また,MTG(マジックザギャザリング)の英語版カードを発見しつい買ってしまいました.ウォールマート自体は4回目くらいなのでそこまで驚き体験はなかったのですが,アーケードの筐体がそのまま売っていたのが面白かったです.アメリカでしか売っていないARグラスやVR機,スマートスピーカーとかあるかな~と期待したのですが,日本と変わらず.そこまでアメリカでも市民権を得ていないっぽい.

その後ゲーミングの展示を見に行きました.入るときには5分くらい列に並び,入り口で保安検査を受けました.といってもリュックを軽く開けて中を見るくらいの軽いものです.ゲーミングの中は以下のコンテンツがありました.

・商用ゲームの展示

・ゲーム大会(スマブラ,PUBG,MTGポケカLoLなど)

・スタートアップのゲーム展示コンテスト

・グッズ販売

・ゲームに関連する講演

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ゲーミング会場入口の保安検査

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ゲーム大会の様子

18時に集合し,イタリアンレストランに向かいました.実はここが個人的に一番おいしかったです.その後Japan niteという日本の音楽イベントに参加しました.日本での選考に通った4つのバンドがSXSWで演奏するイベントで,私たちはASTERISMとFURUTORIのライブに参加しました.途中,そばにいた日本のアイドルに詳しい方から耳栓を頂き,快適に楽しめました.音楽とエンタメは世界共通だな,と感じました.

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ASTERISMという全員16歳,佐賀からのメタリックバンド.とてもクールに渋いバンドでした.髪のパフォーマンスが凄かったです.

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FURUTORIという女の子二人によるバンド.個人的にむっちゃ惚れました.詳しくはライブに参加して下さい.

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この日はいくつか講演を少し聞きつつ,ゲーミングで遊びました.

・Esports and Music - Next Generation Entertainment

・Mental Health Matters: Practical Guide for the Touring Musician

・The New Cannabis Consumers

・SXSW Gaming Pitch Competition Finals

SXSWの今年のトレンドとして,ゲームや音楽による心の治療や,大麻ビジネスの講演が多かったです.技術の発展,というだけではなく,技術をどのように活用し,生活を豊かにしていくかという観点へ世論が推移していった印象を受けました.

大麻のセッションでは,大学で使ったことがある人と声をかけられたところ70%くらいの人が手を挙げていたのが印象的でした.一概に悪いものとして禁止されている現状,どのように活用すれば効果的になるかといった研究もできないのが問題となっており,正しい知識の伝達とブランディングが課題となっているみたいです.

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Gaming pitchで優勝したチーム.歌を使ってアトラクションをクリアしていくアクションゲーム.サイレントシティに声を響かせよう,というストーリーらしい.ギターヒーローなどとの差別化について質問を受けていました.コンセプトやデザインが美しい仕上がりで,デモ動画として紹介したボイス活用も会場に笑いを誘っており,納得の受賞でした.

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夕食後,音楽ラストデイなのでクラブにいってきました.街中の様子.とても賑わっておりSXSWのメインイベントってここだなあと感じました.

 

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一件目は白人が多めで比較的フォーマルなクラブという感じでした.少し周りの人と話ましたが,爆音であまり聞き取れず. 二件目は笛×EDMというとても面白そうな曲をアプリ上で紹介していたところに行ったのですが,思った以上に黒人比が高く,若干身の危険を感じたので早々に退散

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最終日はオースティンの観光と,ゲーミングの展示&講演に行きました.

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Graffiti parkという様々なグラフィティがフェンス越しで見れる公園.元々は自由に入れたみたいですが,今年の一月に解体のためフェンスが設けられたらしい.

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オースティンの図書館.本だけでなく,SXSWに展示されたメディアアート作品も置かれている.ARを利用した壁紙,音のなる植木鉢など.

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図書館の屋上からの景色.自然豊かでとても居心地が良い.こういった景観もオースティンが人を引き付ける要因なんだな~と感じました..

続いてゲーミングの展示に向かいました.

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特に印象的だったのが脳波レーシング.脳にヘッドギア的なものを付け,意識を向けるとレーシングカーが動く.

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グッズの販売も沢山ありました.個人的に↑の絵師さんの絵柄がとても惹かれました.

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ゼルダの伝説によるメンタルケア効果についての講演. リンクという勇者になりきることで自己肯定感を得る話,時のオカリナでの少年から大人になる経験をすることによる心の成長,ムジュラの仮面による様々な人の立場の経験やトラウマの昇華体験,ゼルダというヒロインを助けることによる自己肯定感の話など,一ゼルダファンとして確かに経験していることを説明してくれました. 質問の時間で,ゼルダのコスプレをしている子の体験(何度も入退院しており,ゼルダのプレイを通して救われた話)が印象的でした.

おわりに

「日本から世界に通じるサービスの広め方を知りたい」という問いに対し,完全な答えが得られたわけではないのですが,「意思決定者のハッカソンへの誘致」「コミュニティづくり」「精力的な宣伝と実際に社会を便利にする体験の提供」といった鍵となる知見が得られました.また,日本の誇るお二方とハッカソンが出来てとても楽しかったです.

このような素晴らしい機会を頂け,Sechackの皆様には頭があがりません.本当にありがとうございました.この経験を活かし,日本の産業界を盛り上げていけるように精進していきたいと思います.そして,Sechack365の活動がゆくゆくはSXSWのようなコミュニティに発展するように祈っていますし,僕自身も活動していけたらと思います.

この記事で少しでも興味を持った方はSXSWへの参加,まずはこういった人達が集まるSechack365へ応募してくれると嬉しいです.